東日本大震災、続く福島第一原子力発電所の事故により被災された方々に、心よりお見舞い申し上げます。私もかつて仙台市に8年間暮らしておりました。この衝撃は言葉にできません。あの日から、仕事・生活を通じ私が出来る事をじりじりと行っていますが無力感が募ります。しかし千里の道も一歩からです。必ず供に歩き通しましょう。
ワイナリー通信春号の原稿を書き上げたのが3月11日昼前でした。いのち芽吹く季節を迎え、タケダを通じ自然の力を考えてみたいとテーマを選んでいました。人知の及ばぬ大きな力をこのようなかたちで思い知るとは想像しませんでした。被災地の現状を思うと辛い部分もありますが、やはり大事な話です。皆様に知って頂きたく掲載いたします。
タケダワイン裏ラベルにある『自然農法』とはどういうものだろう。『有機栽培』は国の定めた基準だが、それとは違う。具体的にどういう事か社長に訊いてみた。
社長 「私達のいう自然農法とは、自然の力を最大限に引き出すため、人間が手を貸しつつすすめる栽培方法です。」
畑を放っておくのですか?
社長 「放置とは違う。畑には動植物を巡る自然の循環がある。土中の微生物に始まり、ミミズを食すモグラや鼠・雀、それを狙う猫・トンビ。アブラムシと天敵テントウムシ。そして、命が尽きた動植物を分解する微生物にもどり一周ですね。このサイクルがうまくまわれば、その中で葡萄も逞しく育ち良い実を結ぶ―という考えです。」
ああ、田舎育ちの私には感覚的に解ります。では、どうやって人が手を貸すのですか。
社長 「そもそも“畑”は不自然なのです。開墾し、邪魔な草を除いて毎年同じ作物を作る。単一化することで効率よい農業を進めてきた。でもそれは土にとって大変なストレス。雑草も虫も含めた種の多様性が“自然”なのです。とは言え、天に任せてばかりもいられません。例えば草が伸び放題で風通しの悪い畑にならぬよう草刈りをする。梅雨に繁殖するカビ等菌に対しては有機認定をとれるボルドー液などを施しますが、これもかなり少ない回数です。」
ワイン造りも小さなサイクル。果汁の中で酵母が糖を食べ発酵し酒となる。酵母も一種類とは限らない。良いワインを造ってくれるのも、都合の悪いのも存在する。各酵母が活発になる条件の違いもあり、醸造時は目を離せない絶妙なバランスで成り立つ。
社長 「1.環境を崩さず壊さず100年後も農業ができる事。2.ワインは地の恵みの飲み物であるがゆえ、自然循環が良好な土地の葡萄こそが、より地の味をもたらす。以上が私の信条です。可能な限り畑で付いた酵母で醸造したい。人工的なアイテム(糖や酵母)を加え管理すると計算通りの味にはなる。でも、それを越えるミラクルは生まれません。葡萄収穫時に味は決まっている。私はそれに従って手助けをするのです。」
先代から続くタケダの土作り。土のバランスはデリケートで、一度汚されると回復するのに何十年もかかる。
社長 「うちの畑は他に比べて雪解けが早い。何故だと思います?微生物の活性が高く、熱を発しているからです。ワイン造りは土から始まっています。この土はタケダの宝です。」 |
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