〜タケダワイナリーのホットな裏話を毎回楽しくお伝えします〜
菅井由美子さんはタケダワイナリーの葡萄収穫をはじめ、ワイナリーでいろんな仕事を経験した山形市在住の主婦です。子育てをしながらワイナリーの今の様子をレポートタッチでお伝えします。
Vol.32【2010年春号】 のMENUは・・・
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  ■ おすすめワイン やわらかな陽の光にピッタリの、春薫るワインをどうぞ。
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おかげさまで タケダは90年

1920年にタケダが果実酒醸造免許を取得し、ワイン造りを始め今年で90年になります。
当時は「金星ブドー酒」の名で販売していました。
今回のテーマはタケダワイナリー創成期です。
 

 明治初期、現在の山形市北部“沖の原”の大地主の長男・武田猪之助は、「一生食べて往ける」財産を分け与えられ独立した。というのも、この猪之助さん“呑む打つ買う”の三拍子がそろった人で、家の行く末を案じた一族が相談の結果、後継ぎとして相応しからずと分家にされてしまったのだ。山形市二日町に居をかまえ、現・天童市と上山市に農地を求め小作人を使い果樹栽培をはじめた。葡萄、サクランボ、柿等の栽培から販売までを行うが、どちらかといえば青果物商の方が主だったようだ。やがて、二代目に引き継がれていく。

 時代は大正になり世はハイカラ。栽培したブドウで葡萄酒を造り始めたのが、大正9年。でもこの頃は、所謂“旦那様”で、畑仕事も酒づくりも、人を使ってのことだった。これに反発を感じていた三代目・重三郎は、畑や工場に出向き、額に汗しながら葡萄栽培を本格化してゆく。1934年現在地(上山市)に移り住み、農園を拡大。マスカット・ベリーA等、当時の新品種を植樹した。―これが現在『ドメイヌ・タケダ ベリーA古木』の原料となっている。―天童市の農園は実弟が受け継ぎ果樹栽培を続けていた。第二次大戦後の農地改革の時は、もちろん自作地と認められ土地を失わずに済んだという。
      
 1953年に醸造永久免許を取得。翌年には工場の規模拡大を行い、ワイン造りを続けながら、ブドウやリンゴなどの果汁の製造もはじめる。東京農業大学で醸造学を修めた四代目・重信(現・会長)が事業を継承したのは1962年。学生時代に感銘を受けた仏ボルドーの一級ワイン『シャトー・マルゴー』を目指し、いずれはワイン専業にと望みを抱いていた。

 1974年、火災で工場を全焼。「現在、シャトー・タケダを貯蔵している小セラーは祖父の代からのもので、火災の際、ここだけ無事だったのです。中に当時の『アストール』が残って…。父が、その後しばらく灰を被ったそれを飲んでいたのを覚えています。」その頃小学生だった、現社長・岸平典子は「鮮明な記憶」と語る。

 地元大手銀行に「ワイン醸造に資金は貸せない」と断られながらも諦めず、情熱をかってくれる金融機関と出会い火災から5カ月後、重信はワイン専業とする事を決断し、新工場の設計図を残し二ヶ月間欧州へ旅立ってしまう。

 その後の、土壌改良から始めた欧州系ワイン専用葡萄栽培の成功は、雑誌等でご存知の方も多いと思います。

 ワイナリーとして90年。岸平社長に思いを訊いてみた。「伝統は買えない、とは亡くなった私の兄の言葉ですが、近頃身に沁みて感じます。真っ当な商売を続けてきてくれた事に感謝をし、私も先祖に恥じない様精一杯努めたい。」そういえば、『サン・スフル』〈赤〉と、〈シードル〉の林檎、どちらも原料は天童産ですね。「ワインは原料が命です。上山のデラウェアもそうですが、祖父の代からお付合いのある方々とは、昨日今日では得られない信用という宝があります。」

 10年後に100周年を迎えるが?「淡々とやっていくだけですね、当たり前に美味しいを造る。あとは、会長に長生きしてもらって一緒にお祝いしたいです。」
 


   


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