2007.冬
キャップシールコルク栓の上に被せてあるカバーの名前はキャップシールです。これにも種類がありまして、ワイン銘柄によって素材の違うものを使っています。
①蔵王スター等多く使っているのは、ポリスチレン製のもの。滅菌した瓶口に帽子のように被せ、先が円筒状のコテで熱を加えます。キュッと縮んで出来上がり。
②金属の錫(すず)でできているのは「シャト-・タケダ」に用いています。手に取った時の重さが特徴的。これをはめるには専用機械があります。瓶にキャップをセットしペダルを踏むと、ギュルギュルとローラーが降りてきて、キャップを瓶に押し付け形を作ります。
③ポリラミネートにアルミを貼り合わせ、キラキラした見栄えのキャップは、キュベ・ヨシコ用。キャップの正面が決まっていますので、それがきれいに見えるよう特殊なたたみ方が必要です。これも専用機があります。
①②は、キャップシール・機器共に日本製です。③は、仏製。メンテナンスが大変です。
タケダの人達は、とてもおおらかで固有名詞にこだわりません。機械の本名を誰も知りませんでした。代わりに、通称を教えてくれました。①はアチチ、②はギュンギュン、③はバンバン。全部擬態語です。使い方としては「みっちゃん、ギュンギュンしてけね?」だそうです。
Winery通信 Vol.23
2007.秋
コルク栓 その2キュベ・ヨシコに使われているコルク栓はシャンパン用です。発泡ワインは瓶内の圧力が高い為、他のワイン用とは違う、専用のを使います。瓶口の内径12mmに対し、コルク栓30mmと太い。材質は、天然コルク樫と圧搾(成型)コルクを組合わせてあります。ワインに触れる下側が天然素材。
抜栓後は大きなマッシュルームのような形をしていますが、使用前は普通の円柱形。それが蒸されて、栓としてはめられ、ワイヤーに押さえつけられ暮らしている内に、お馴染みのラブリーな姿になったのです。
実は、この「蒸す」が重要なポイント。二倍もある太さのコルクが極めて入りにくいのは、容易に想像がつきますね。そうなのです。タケダでも大変だったのです。
日本では先駆けとしてシャンパーニュ製法で造った本格的な発泡ワイン"キュベ・ヨシコ"のお目見えが1992年。その頃、典子氏は仏留学の真っ最中。そんなある日、日本の父から国際電話が掛かってきた。珍しいな何事か、と電話口に出ると、
「入らね。かっだい。」訳:コルクが硬くて瓶口に入らない。
力で何とかならないでもないが、製品として考えるとこんな大変なはずはない。商社に聞いても埒が開かないので、正しい方法を調べて欲しいとの事。仏でも扱う店ではわからず、コルク栓メーカーの電話番号を調べて問合せ、蒸気で柔らかくしてから使用する事が判明。タケダ工場では急きょ、家庭用蒸し器を使いながらの作業となった。
今はステンレス製の特注蒸し器を使っている。「これが大きくてね(笑)。」心意気です。
Winery通信 Vol.22
2007.夏
コルク栓 その1ワイン瓶の封をするのに必要なコルク栓。近頃はスクリューキャップを使うメーカーもありますね。
コルク樫の外側の樹皮を剥いで、乾燥後、煮沸などの処理を行い、加工します。ポルトガル・スペイン等の地中海西部沿岸地方で栽培されているそうです。
樹皮の質による等級があり、目の詰まった弾力性の高いものが良品とされる。自然の産物である為、生産数に限りがある。近年コルクの需要が増え、高品質の商品を安定して入手するのが大変になっているが、フランス→欧州→米国→その他 の順に大変さが増す。フランス強し。
天然コルクの他、圧搾(成型)コルク、樹脂製の人工コルク。天然と成型を組合わせたコルクもある。
長期熟成のワインには、天然コルクの目の細かい長いものを使用。
ソムリエが抜栓後、これでよろしいか?とティスティングさせますが、これはワインが劣化していないのと、コルク臭が無い事を確認する為。「気に入った?」とは違うそうです。念のため。
Winery通信 Vol.21
2007.春
ワイナリーもの語り ※新コーナー登場※
初めは、シャンパン瓶についての話。
ワインの周辺には、長年培われてきた文化があります。そこには、やはり日本とは違う匂いがあり、それがオシャレに見えたり、とっつき難いと感じたりするのかなと思います。道具ひとつをとっても、海外からの輸入品が多く、いかにも『お客様』といった感じですものね。
でも、実際にワイナリーに来てみると、風景に溶け込んで、山形の田舎の一部と化しているから不思議です。
ワイナリーで使用している小物・道具をチョロっとご案内し、ワインをより身近に感じて頂ければいいなとの、社長の発案企画。
キュベ・ヨシコに使用しているシャンパン瓶の一番の特徴は、口元にあります。よ~く見てください。①二段の凹凸がありますね。二口(ふたくち)と呼ばれています。これは、中身のスパークリング・ワインが仏のシャンパンと同じ製法、瓶内二次発酵によって造られている証しです。②中央の凸は、ベース・ワインに酵母を加えた後、被せる王冠用のもの。③澱引きの時に、澱と共にその王冠は吹っ飛ばされ、後に栓をしたコルクを抑える為のワイヤーをかけます。それが左端の凸。
① | ② | ③ |
スパークリング ワインは5~6気圧になっているので、ガラスは厚く頑丈で、10気圧までOK。タケダではフランス製を輸入しています。値段は高くなるが、"二口"シャンパン瓶は、日本では製造されていないのだ。需要がないのでしょうね。尚、"一口"なら日本製もあります。
海外有名シャトーでは、自社の紋が刻印された専用瓶があり、昔からずっと使っている所もあるそうです。ワインを飲み終え、ラベルを剥がしたとしても、どこのワインなのか判る。如何に誇りをもっているかが窺えますね。
6リットル入り等、容量もいろいろ。ちなみに、カタログ上最大の瓶は18リットル。注ぐのが大変そうだなあ。
Winery通信 Vol.20
2005.夏
こぼれ話 その1 現在の瓶詰め機は約15年前に購入しましたが、これはその時の話。 タケダ兄妹の仏留学の際に、身元引受人となり親代わりに世話してくれたカミーヤ氏の営む商社を通じて、伊製の機械を取り入れる事にした。据付工事には仏人のカミーヤ社長と秘書(仏・英・伊・スペインの4カ国語を操る!)、伊人技士が2名、日本人技士2名の計6名が来て2~3週間かかったという。3日目頃から伊人の技士達に元気が無くなってきた。心配したヨシコ夫人(タケダ社長夫人)が昼食をご馳走しようとパスタ料理を作り出したところ、涙を流さんばかりに喜んだ。彼らは日本の食事が口に合わず、困り果てていたのだった。そこで。ヨシコ夫人は伊製パスタを大量に取り寄せ、工事期間中、毎日せっせと料理をした。当時、上山市周辺でイタリア料理の店を見つけるのは至難のワザだったでしょう。後に、仏に帰国した秘書嬢が「あなたのママは料理が上手。」と典子氏に言ったそうです。その2 ワインを造る為の機械は、大半が外国製です。
タケダの工場内で、日本製のものといったら、白ワイン醸造用の青いホーロー製のタンクでしょうか。日本酒を造るのと同じだそうです。あ、機械じゃなかった。
タケダ・ワイナリーには、仏、英、伊製の機械があります。「色々な国の機械には、其々お国柄が出ていて、面白いですよ。」
典子氏曰く。独の機械は頑丈で合理的。操作もメンテナンスも解りやすい。最部に至るまで考えてある。対して伊製はというと-。水を扱うにも関わらず、防水があまい。微調整したい所は空圧制御で、それが難しい等、おおらかに出来ている。が、デザイン的に美しい。「伊は乾燥した土地ですから、防湿に対する考えが日本と違うんでしょうね。」
Winery通信 Vol.13
菅井由美子(すがいゆみこ)
山形市在住/弊社社長、岸平の高校時代からの友人。成人から高校生の3人の子供の母親。葡萄収穫をはじめ、ワイナリーでのいろいろな仕事の経験がある。それを活かしつつ、タケダワイナリーの今の様子をレポートタッチでお伝えしています。