Winery通信 SUMMER Vol.88
みなさま覚えておいででしょうか。2008年北海道洞爺湖サミット最初の乾杯は「ドメイヌ・タケダ《キュベ・ヨシコ2003》」でした。キュベ・ヨシコは、シャンパンと同じ伝統方式で造られる瓶内二次発酵の発泡酒です。造り方をおさらいしてみましょう。
はじめに、ベースとなる白ワインを造ります。
次に、二次発酵に必要な、アルコールの中でも安定して働く強い酵母"酒母"を作ります。少量のベースワインに酵母を加え、アルコールに慣らしながら育て、増やします。
そして、ベースワインに酒母と砂糖を入れて瓶に詰め(ティラージュ)、王冠で栓をしてセラーへ。瓶の中で二次発酵が始まり、発生した炭酸ガスがワインに溶け込み、スパークリングワインになります。役目を終えた酵母は澱になり沈殿します。
澱から旨味や香りが出るので、そのまま寝かせます。これをシュール・リと言います。3年経過した気温が最も低くなる時期に、瓶口に澱を集めます(ルミアージュ)。その後、王冠ごとポンッと澱を飛ばして(デゴルジュモン)、コルクを打栓しワイヤーで固定します。ここから通常3年寝かせて完成です。
ちなみに仏国ではミレジメ・シャンパーニュ(収穫年を表記することが許される逸品)は瓶詰め(ティラージュ)から出荷まで最低3年以上と規定があるそうです。
今回リリースする≪キュベ・ヨシコ良質年産≫は、殊のほか葡萄が良質だった2003年収穫。つまり、洞爺湖サミットで各国首脳が召し上がったワインの古酒です。通常より長い10年以上のシュール・リ期間を設けました。
繊細な泡立ちに、シャルドネの香りとシャープな酸が広がります。
この1本との出会いは、こころに刻まれる体験となるでしょう。
菅井由美子(すがいゆみこ)
山形市在住/弊社社長、岸平の高校時代からの友人。成人から高校生の3人の子供の母親。葡萄収穫をはじめ、ワイナリーでのいろいろな仕事の経験がある。それを活かしつつ、タケダワイナリーの今の様子をレポートタッチでお伝えしています。