ワイナリー通信

やはりここはマスカット・ベリーAでしょ

Winery通信 SUMMER Vol.80

 

 私が心から待っていた「サン・スフル ロゼ」が再び販売です。
 たとえ開栓に2時間掛かっても飲みたいワインでした(注釈:かつてサン・スフル ロゼは瓶内のガス圧が高く澱もあり、吹かずに開栓するのは難儀だった)。ここ何年かの秋号取材の際に「サン・スフル ロゼは造ってない」と岸平社長に伺うたんびガックリしょぼん。

ベリーA 畑.JPG
それがこの夏。安心安全(?) な発泡ワインへリニューアル。
岸平「醸造方法を少し変えました。タンク発酵の時間を長く取って、瓶内発酵を抑えました。以前よりガス圧が低くなり容易に開栓できます。」
ロゼらしい色ですね。あくまで『当社比』ですけど。
岸平「赤かったからねえ、前は。今回はパンチの効いた発泡ロゼじゃなく、より洗練された、カジュアルに楽しんでいただけるものを造りました。」
このワインはもう造らないのかと思っていました。再び醸造したきっかけはありますか。
岸平「私も飲みたいなあとずっと思っていたし(笑)。マスカット・ベリーAをもっと探りたい気持ちが強くなっていて。
2013年、OIV(国際ブドウ・ワイン機構)に日本の固有品種として登録され、ワイン業界においてベリーAの地位が上がってきていると感じます。でも未だに"キャンディ香がジュースのよう"と敬遠なさるユーザーは少なくない。美味しいワイン(しかも日本固有の)だと知ってもらう為に、造り手としてやる事がもっとあるのではないかと思うのです。」


岸平さんはこれまでも酸化防止剤無添加、樽熟成、黒葡萄ベリーAから造る白ワインと、いろいろ挑戦なさっています。
ロゴマーク.jpg岸平「いま、葡萄栽培者・醸造者はトライ&エラーを繰返しながら各々スキル向上に励んでいます。でも、1年に1回しか試せないんですよね。ひとりができる事は限られる。栽培農家や醸造仲間と話していると、こういう繋がりが大事なんだと感じます。
そこで、2021年にこの品種の全国的な勉強会を立ち上げました。名称は【MBA1927→】です。これは川上善兵衛氏がマスカット・ベリーA種の栽培に成功、品種登録された"1927年"と未来へのつながりを意味する"→"から名付けました。国産ベリーAのワイン醸造者と栽培者の情報交換や勉強会、イベント等の活動をします。」
白バック ベリーA 6本 01.jpg品種限定、しかも全国版の勉強会ですか。
岸平「はい。品質向上、認知度向上を目指す有志の集まりです。ひとつの品種について栽培者と醸造者が一緒に活動する団体は、日本ではあまり聞いたことがない。画期的な試みでしょう。ちなみに、川上善兵衛氏の"岩の原葡萄園"社長が会代表です。日本ワイン・ベリーAはこれからもっと良くなりますよ。」

 

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著者プロフィール

菅井由美子(すがいゆみこ)
山形市在住/弊社社長、岸平の高校時代からの友人。成人から高校生の3人の子供の母親。葡萄収穫をはじめ、ワイナリーでのいろいろな仕事の経験がある。それを活かしつつ、タケダワイナリーの今の様子をレポートタッチでお伝えしています。