Winery通信 SPRING Vol.79
発泡ワインには、出来上がった酒に炭酸ガスを注入するタイプもありますが、タケダワイナリーは全て瓶内発酵で造っています。「サン・スフル白」「ペティアン」そして「キュベ・ヨシコ」。3種とも同じ製法なのでしょうか?今回はその辺りを探検してみましょう。
ワインは、酵母がブドウ果汁の糖を食べ、アルコールと炭酸ガスに分解することで造られます。
ブドウをしぼった果汁を、タンクに入れ発酵が始まり、果汁は"もろみ"(果汁とワインの中間のもの)に変化します。酵母の活動が始まり、エサとなる糖分が十分にある状態です。
このもろみを瓶に詰め、地下セラーで寝かせます。発酵が進み、酵母がアルコールと炭酸ガスを造り続けます。このガスが液中に溶け込んで泡となるわけです。仏語でメソッド・アンセストラル"古式製法"と呼ばれる手法です。
「サン・スフル白」はこの瓶内一次発酵で造っています。
≪瓶内二次発酵≫
ベースとなるワインを醸造し、出来たところで二次発酵用の酵母"酒母"を作ります。酵母にとってアルコールは住み良いところではありません。しかも瓶の中は酸素が少なく、低温。この過酷な環境でも活動できる強い酵母が必要です。少量のベースワインを加えながら、酵母をアルコールに慣らし育てます。これが酒母です。
ベースワイン、酒母、砂糖を瓶に入れ王冠で栓をして地下セラーへ。瓶内の圧力が上がり切れば発酵が終了です。酵母は澱になり沈殿します。これが瓶内二次発酵です。「ペティアン」はここで完了。あとは飲み頃を待つばかり。
おなじ瓶内二次発酵でも「キュベ・ヨシコ」はまだ先があります。メソッド・トラディショナル"伝統製法"という、仏国シャンパーニュと同じ造り方です。
澱から旨味や香りが出るので、そのまま3年以上寝かせます。その後、ピュピュトルという、瓶口を下にして差し、毎日90度ずつ回すと最後は瓶が垂直になる板を使って、一ヶ月かけて瓶口に澱を集めます。
一年で最も寒い2月、澱引き。瓶口を凍らせ、栓を開けると、ポンッと王冠ごと澱が飛びます。吹きこぼれた分のワインを足し入れ、コルク栓・ワイヤー栓をはめて終了。ここから熟成期間です。
日本の酒税法上、瓶内発酵は製造が認められていませんでした。先代の「キュベ・ヨシコ」、現社長の「サン・スフル」。タケダは二代に渡って税務署に掛け合い、認可を得て、それを可能にしてきました。いわば先駆者ですね。
典子社長曰く「フランスでは古くからある製法なんですけどね・・・」
菅井由美子(すがいゆみこ)
山形市在住/弊社社長、岸平の高校時代からの友人。成人から高校生の3人の子供の母親。葡萄収穫をはじめ、ワイナリーでのいろいろな仕事の経験がある。それを活かしつつ、タケダワイナリーの今の様子をレポートタッチでお伝えしています。